第3回 Science of Science研究会に参加した話

こんにちは、リサーチャーの鈴木貴之です。fuku株式会社にて研究活動を行っており、学生時代はバイオインフォマティクスを中心に研究していました。現在は、ライフサイエンス研究(特に論文)を対象とした研究に取り組もうとしているところです。そんな中で代表の山田からのお勧めにより、第3回のScience of Science研究会に参加する機会を得ました。本記事では、その参加報告を兼ねて、感じたことや考えたことをまとめてみます。

Science of Science(SciSci)とは?

SciSciとは、その名の通り科学を研究する学問分野です。Science of Science第2回研究会Webpageによると、「科学を取り巻くメカニズムを明らかにすることに取り組む学際的な学問領域の総称」とされています。似た分野として、科学社会学、計量書誌学、ネットワーク科学などなどがありますが、SciSciの特徴は、「計算的アプローチを用いて科学の裏にある構造に迫る」点にあるようです。とはいえ、実際には今回の研究会でも、「SciSciとは何か」、「どのように収束していくのか」、といった議論が交わされており、まだ定義や輪郭が流動的な分野なのかなと思っています。オープンサイエンスが進む今の時代だからこそ立ち上がってきた新たな分野の学問ともいえるのかと思います。その点に、個人的にはワクワク度が高まりました。

研究会の感想

予想通り、非常に多様な分野の研究者や研究支援者が参加されており、研究領域ごとに異なる科学の構造が存在することを改めて実感しました。科学全体の構造についての議論はもちろんですが、研究分野特有の課題に関する議論の場としても、SciSci研究会は非常に有意義だと感じました。

様々なトピックがある中で、特にピックアップされているなと感じた分野は、「科学と政策」かと思います。基調講演でもこのテーマから始まり、パネルディスカッションでも頻繁に取り上げられていた政策の話は非常に印象的でした。「policy-based evidence making(政策に都合のいいエビデンスを後付けする)」を減らし、少しでも「evidence-based policy making(科学的根拠に基づく政策立案)」が増えるために、SciSciが果たす役割は非常に大きい可能性があるという議論には共感を覚えました。SciSciは社会との関わりが密接な研究分野であるということを、現場で再認識する機会にもなりました。

私が興味を持つSciSciの可能性

ライフサイエンス分野は、SciSciの研究対象としても非常に興味深い領域だと思います。というのも、オープンサイエンスが比較的進んでおり、膨大な量のライフサイエンス関連の文献や研究データが、国境を超えた協力体制により再利用可能な形で整備されつつあるからです。

私自身も、そうしたデータ基盤を活用しながら、データ駆動的にライフサイエンスに関する仮説を導き出す研究を行なってきました。一方で、ライフサイエンスのデータ駆動科学のための基盤にはまだ課題が残されていることもみえてきました。今後の研究では、そうした課題の洗い出しと、その改善の方向性に焦点を当てていきたいと考えています。

このような関心をSciSci的に表現するとすれば、「計算的アプローチを通じて、ライフサイエンス分野におけるオープンサイエンスの促進、その意義や課題解決に迫る」といえるかと思います。こうした研究を進めるうえで、他分野ではどのような知見やアプローチが展開されているのかを知ることが、自身の研究視野を広げる上で重要だと感じています。

他分野の研究者との意見交換を通じ、自分の研究を見つめ直すと同時に、いつかは自分の知見がSciSciコミュニティや他分野にも貢献できるようになりたいという思いが今回芽生えました。今後もできる限り継続的にSciSci研究会に参加していきたいと考えています。